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2025年06月

エアインダクションシステム(AIS)について VOL5 「エアインダクションVSエアインジェクション!?」

前回は、エアインダクションシステムの排気系負圧に重点をおいた記事でした。

これに付随するお話を今回してみたいと思います。

AIS。多くの人は「エアインダクションシステム」と言っていますが、なかには「エアインジェクションシステム」と言っている人もいます。

どっちが正しいの? 
2025-06-28インダクションインジェクションquestion_head_boy

【用語の意味の違い(英語の定義)】
・Induction(インダクション) 誘導・吸入・引き込み 吸気、負圧による自己吸引を表す動作(例:吸気インダクション)

・Injection(インジェクション) 噴射・注入(強制的に押し込む) 燃料インジェクション(インジェクターなどで強制噴射)

【システム構造から見た正確な名称】
AIS は、エアポンプやインジェクターなどの強制的な圧送手段を用いず、排気ポートで発生する脈動負圧(排気サージ)を利用して、リードバルブを開かせ、空気を自然流入させる構造です。

したがって、セロー225WEキャブレター車に採用されているようなAISは、<誘導吸気(induction)>に該当し、「エアを噴射(injection)」しているわけではありません。

*ゆえに「エアインダクションシステム」が正しい技術的名称で、「エアインジェクションシステム」は構造・原理の観点から見て完全な誤用だと言えます。


【補足及び備考】
1.なぜ「インジェクション」と言われることがあるのか? (推測です。)
・一般的に「エアが排気に入る」=「吹き込む(=injection)」という感覚的な誤解の為か?
・「フューエルインジェクション(FI)」と混同して、「インジェクション=先進的な装置」と捉えがちなためか?

いずれにせよエアインジェクションシステムの呼称は誤用です。


2.おまけ・・米国の資料から
米国EPA(環境保護庁)の資料では「Secondary Air Injection System」という表記も見られますが、
これは以下の2方式を含む広義の分類名称で、実際の構造により細分されます:
Passive Type(受動型):負圧による吸気 → インダクション方式
Active Type(能動型):エアポンプで強制噴射 → インジェクション方式

セロー225WEのような構造はPassive(受動)方式にあたり、やはり技術的には 「Air Induction System」 と呼ぶのが正確です。

また、Active Type(インジェクション方式)を採用されたバイクは現段階ではこの世の中に存在していません。

3.カワサキにおいては、「エアインジェクション(KLEEN)と呼称されることも・・」
厳密な物理現象の呼称というより、「総称的に」排気系に空気を送り込むシステムを指す言葉として使っているのではないかと思われます。

2次空気導入装置全体を「Air Injection System」と総称することが、特に北米向けサービスマニュアルなどで定着しているようです。

そしてカワサキでは 2次空気導入装置を KLEEN(Kawasaki Low Emission Engine) とブランド化しており、それを説明する文脈で「Air Injection System」と呼ぶことがあるようです。

実際のところ、2000年代初期のエストレヤ(キャブ車)のパーツリストや英語サービスマニュアルでは、「Air Injection System」や「KLEEN AIR SYSTEM」と表記されている場合が確認されています。

一方、日本語マニュアルでは「2次空気導入装置」「KLEENシステム」などの表記が優先され、エアインジェクションという語は少なめなようです。


結論:「エアインジェクションシステム」と言っちゃうと、「あ~~、この人 仕組みがわかってないなあ~」と思われちゃうので、「エアインダクションシステム」と言うようにしようっと。v( ̄∇ ̄)v

-続く-

*キャブレター車におけるエアインダクションシステム(AIS)の説明です。


エアインダクションシステム(AIS)について VOL4 「排気側の負圧のお話-排気脈動」

エアインダクションシステム(AIS)についてのお話の続きです。

VOL1では、エアインダクションシステムの概要と一連のメカニズムのお話をしました。

VOL2、VOL3では、吸気系周り-エアカットバルブにスポットを当て、VOL1の補完説明をしました。

今回のVOL4では、排気系周り-リードバルブにスポットを当てたいと思います。


エアインダクションシステムによって排気ポートに空気が流れる条件は、エアカットバルブとリードバルブの両方が“開”になっているときです。

エアカットバルブは、インシュレーター(またはキャブ内部)からの負圧が強いと閉じ、負圧が弱いと開きます。これは主に加速時(スロットルを開いた時)に開くことを意味します。

一方、リードバルブは排気ポートに負圧が発生したタイミングで開きます。
よって、加速時で排気ポートに負圧が生じている瞬間に、AISから空気が送り込まれ、未燃焼ガスの酸化が促されます。


VOL1の内容と重複しますが、お許しください。

【リードバルブの役割】
・リードバルブは逆流防止弁の役割。

・排気ポート側に取り付けられており、排気系に負圧があるときだけ外気を吸い込むようにできています(AIS経由)。


【リードバルブに負圧がかかる状況】

エンジンが動作すると、排気バルブの開閉とピストンの動作によって、排気管内部には排気脈動(波状の圧力変動)が生まれます。

特に排気バルブが閉じた後、排気ポート内で一時的に負圧になる瞬間がある(排気ガスが高速で通過した後の流体力学的な吸引効果)。

この瞬間に、排気ポート側に負圧が発生し、リードバルブが開く。

外気がAIS経由で排気ポートに引き込まれる。

※この負圧は「吸気側の負圧」とは性質が異なり、排気脈動による瞬間的な吸引力です。



わかりやすくするため、図を作成してみました。

この排気脈動は、4サイクルエンジンの排気行程の中で発生しています。

私の時代は、「4サイクルエンジンは、(1)吸気(空気と燃料の混合気を吸い込む)(2)圧縮(混合気を圧縮して点火プラグで点火)(3)爆発(混合気の燃焼)(4)排気(燃焼ガスを押し出す)の4行程で、ピストンが上下運動を2回繰り返し、動力となる。」と中学校の技術の時間で習ったものですが、今はこういう事が教科書に載っていないみたいですね。(^^;

1)爆発行程後、ピストンが上がり排気バルブが閉まろうとしている。
01-ais排気脈動の説明画像
2)排気バルブが閉まり・・
02-ais排気脈動の説明画像
3)排気ポート内で一時的に負圧になる瞬間がある(排気ガスが高速で通過した後の流体力学的な吸引効果)
03-ais排気脈動の説明画像

4)排気ポート側に負圧が発生し、リードバルブが開く。外気がAIS経由で排気ポートに引き込まれる。
04-ais排気脈動の説明画像

というわけで、エアカットバルブと違い、リードバルブに発生する負圧は、排気バルブが閉じた瞬間に発生する負圧なので、エアの吸引(排気ポートに流れるエア)は瞬間的であり、これが断続的/間欠的におこなわれていることになります。


この図をつくるだけで疲れたので、今日はこのへんで・・。(^^;

-続く-


*キャブレター車におけるエアインダクションシステム(AIS)の説明です。

エアインダクションシステム(AIS)について VOL3 「吸気側の負圧のお話-ホンダ車の例」

前回記事の続きです。

今回もエアインダクションシステムのエアカットバルブ側のメカニズムに関する記事を書いています。

エアインダクションシステム(AIS)を採用している車種の多くは、前回までにも書いたように、インシュレーター内に負圧がかかった場合は、その負圧をインシュレータニップル⇒AISのエアカットバルブに伝えて、エアクリーナーボックスからの空気(大気)を遮断して、AISから排気ポートにエアが流れないようになっています。

ちなみに、AISを採用している例としては、H10排ガス規制後の、セロー225WE、セロー250キャブ車、カワサキ エストレヤ、ホンダ FTR223、XR250、CB223S ・・・etc。

多くはインシュレータ内の負圧からAISのエアカットバルブの開閉をおこなっていますが、ホンダ車のAISは、VMキャブからの負圧も取り込んでいるようです。



今回は、ホンダFTR223のエアインダクションシステムの吸気側の負圧の取り方を調べてみました。

以下FTR223のパーツリストを抜粋します。 (図はクリックすると拡大できます。)

2025-06-24ftr223キャブ構成03

ホンダの場合は、エアインダクションシステム(エアインダクションシステムバルブ)のことをエアーサクションバルブと呼んでいるようです。

呼称は違っても、内部構造にエアカットバルブとリードバルブの2機構持っていることに違いはありません。

赤枠がAISです。セロー225WEは、エアクリーナーボックスとAISが直付け(リベットどめ)されていますが、FTR223はパーツリストのとおりホースでジョイントされています。


2025-06-24ftr223キャブ構成01

キャブレター部です。赤枠がFTR223のキャブ負圧を伝える部分です。パーツリストには、わかりやすくエアカットバルブと書かれています。

このホースの先は三つ又ジョイントになっています。

三つ又ジョイントの下にのびるホースは、下図E-1の赤枠のインシュレーターニップルです。

上図(E-16)の一番左側の黄枠。この行先が先ほどのF16図のAISバルブにホースでつながっています。

ようは、インシュレーター内の負圧(インシュレーターニップル)とVMキャブレターの負圧の双方を利用して、AIS内のエアカットバルブを開閉しているようです。

2025-06-24ftr223キャブ構成02

排気ポートに関しては、E-1図の青枠のところです。青枠から図F-16のAISにホースがのびています。

ここからも、AIS内のリードバルブから排気ポートへエアが流れる仕組みも、他車種と全く同じだとわかります。


さて何故ホンダ車は、エアカットバルブの制御をインシュレーター負圧以外にもキャブの負圧を利用しているのか?

ここからは推測ですが・・

・スロットル開閉に連動したキャブ内の圧力変化(ベンチュリー圧力)を取得しやすい(スロットル直後の負圧等)。 この負圧は微細な変化をすばやく反映できる。

・インシュレーターからの負圧は、減速時などの高負圧状態(スロットル閉時)に顕著に現れる、かつエアカットバルブを強制的に閉じることで、バックファイア及び減速時のアフターファイアを抑制。

よって、両方の経路を接続して、それぞれ異なる条件での負圧変化をうまく使い分けて、エアカットバルブの開閉をより正確にコントロールしているのではないか・・。

いずれにせよ、このような構成は「排出ガス対策としてのAIS制御の最適化」のために意図的に設計されたものなのでしょうね。(^_-)-☆

しらんけど。


さて、次回はエアインダクションシステムにおけるもう一つの重要な役割を持つ排気側のメカニズム(リードバルブ周り)のお話です。

もう誰も読んでくれていないと思うけど・・。

いいんです。自分の理解を深めるためでもあるので・・(^^;

-続く-


*キャブレター車におけるエアインダクションシステム(AIS)の説明です。

エアインダクションシステム(AIS)について VOL2 「吸気側の負圧のお話」

どんどんマニアックな世界の記事になってきました。

マニアックな内容に比例して、どんどんこのブログの閲覧者数が減っています。 ハハハハ・・・(´;ω;`)

いいんだもん・・(´?д?;`)


前回記事では、エアインダクションシステムの概要、目的、メカニズムをひととおり説明しました。

おさらいです。

【エアインダクションシステム (AIS)とは?】
排気ポートに新鮮な空気(大気)を送り込み、排気中の未燃焼ガス(HCやCO)を酸化させて有害物質を減らす装置。さらに簡単に表現すると「排気ガスをキレイにするために、空気を後から混ぜて酸化させる装置」。

・・エンジンの排気には、燃え残ったガス(未燃焼ガス)が少量含まれています。 AISは、排気の脈動(負圧)を利用して大気中の空気を吸い込み、排気ポートに流入させます。

空気に含まれる酸素によって、未燃焼ガスを排気ポートやエキパイ内で酸化(再燃焼)させ、有害成分を低減します。


前章では、このエアインダクションシステムの動作タイミングも説明しました。

<AISは、排気側に排気脈動による負圧がかかり、かつエアカットバルブが開いているときだけ、リードバルブが開いて間欠的に空気が吸い込まれる仕組みです。>


今回は、そのメカニズムのうち、まずはエアカットバルブ及びそれに関連する部分にスポットを当ててみたいと思います。


Web上で見つけられるAIS(エアインダクションシステム)に関する情報。

ほとんどが「AIキャンセル」、「エアインダクションシステムを取りはずした」、「AIキャンセルのための市販品を取り付けた」etc の類のものばかり。

キャンセルの為の目的とか説明内容に関しては、エアインダクションシステムの構造やメカニズムをあまり理解できていないのかな?と思われる情報がほとんどでした。

例えば・・・

(その1)
H社製バイクAに関する情報は、発信者が違うサイトでありながら、AIS:エアインダクションシステム=(イコール)=エアカットバルブというニュアンスで書かれていたり、エアインダクションシステムとブローバイガス還元装置(PCV:Positive Crankcase Ventilation)を混同し、違いがわかっていなかったり。

”H社製バイクAのAIキャンセル方法” を最初に書いた人のWEB情報を見て、その情報が拡散されているのかな?(^^;

◎<AIS:エアインダクションシステム=(イコール)=エアカットバルブ>は、間違い!
⇒正しくは⇒エアインダクションシステムの重要な構成要件は、AIS内の「エアカットバルブ」と「リードバルブ」。 エアカットバルブとリードバルブが双方同時に開いた時のみ機能する(排気ポートへエアが流れる)。 上記間違いは、エアカットバルブの仕組みを理解していないため。

◎<エアインダクションシステムにブローバイガス還元装置を含む解釈>は、間違い!
⇒おそらくこのような情報をあげていらっしゃる方は、エアインダクションシステムもPCV:ブローバイガス還元装置の区別もついていないのだと思われます。

AIS(エアインダクションシステム)とブローバイガス還元装置(PCV:Positive Crankcase Ventilation)は、排ガス規制対策の一環として共に存在していますが、基本的には「別系統の装置」であり、構造上も機能上も 直接的な相互影響はありません。

相違点を表にまとめてみました。

2025-06-21ASIとPCVの相違点01

(その2)
Y社製バイクBのエアインダクションシステムは、減速時のみに機能している。

◎「Y社製バイクBは・・」は、誤解を招く。
⇒Y社製バイクBにかかわらず、どのバイクメーカーにおいてもエアインダクションシステムの動き/メカニズムは同じで、AIS内のエアカットバルブとリードバルブの制御で機能しています。 (車種によってエアカットバルブの負圧の取る場所とか違う場合がありますが、基本のメカニズムは同じです。この部分については、後々取り上げます。)

◎「減速時(のみ)に機能している。」
⇒この部分は、車種問わず、ほとんどの方が誤解しているように見受けられました。エアインダクションシステムは、エアカットバルブとリードバルブ双方が開いた時のみ排気ポートにエアが流れるように制御されています。

前日の記事に書かかれている通りです。




エアカットバルブの閉まるメカニズムについて再度確認したいと思います。


2025-06-16AIシステムメカニズムⅡ減速時図01


1)エアカットバルブの構造と役割
エアカットバルブ(エアカットバルブアセンブリ)は、インシュレーター(インテークマニホールド)の負圧を利用して動作するダイヤフラム式の制御バルブです。 

主に減速時のアフターファイア防止が目的。

2) 負圧発生のメカニズム
①減速時(スロットル閉じ)、ライダーがスロットルを急に戻す(閉じる)と、スロットルバルブ(バタフライバルブ)が閉じてエアの流入が絞られる。 

②しかしピストンの動作は続いており、シリンダー内では吸引動作が起こる。

③よって、インシュレーター(インテークマニホールド)内に強い負圧が発生する。

④この負圧が、負圧ホースを通じてエアカットバルブのダイヤフラムを引っ張る。

⑤ダイヤフラムが引かれると、エアバルブが閉じて空気の流入を遮断する。

⑥この結果、排気側への空気供給が止まり、アフターファイアを防止する。

さらに、AIS装置内では空気(外気)が遮断され、排気脈動によりニードルバルブは開こうとするが、ニードルバルブは閉じたままで、排気ポートへがエアが流れることはない。

下の図は、エアカットバルブに負圧が発生するメカニズムをしめしたものです。


2025-06-19エアカットバルブが閉まる仕組み図解01a
このようにエアカットバルブは、インシュレーター(インテークマニホールド)内に生じる負圧によって閉じられ、
①アフターファイアを防止する。
②エアインダクションシステムにおいては、エアクリーナーボックスからの空気(大気)がAIS内に流れ込むのを遮断する。(リードバルブが閉じられ、排気ポートへ空気は流れない。)


多くの車種では、AISのエアカットバルブの開閉に、インシュレーター(インテークマニホールド)内の負圧を利用しています。(ホンダ車の一部車種では、キャブレター内部の負圧を利用しています。後日補足します。)

01-s_2025-06-02DSC02282

AIS(エアインダクションシステム)は、1998年以降 日本国内で二輪車への平成10年排出ガス規制が適用開始され、これにより、各メーカーが導入し始めました。


(ここからお話は少々AISから外れますが、ご容赦ください。)

ところが、AISが装着される以前にも、インシュレーターにこのニップルがついているバイクが多数ありました。

02-s_2025-06-02DSC02285


そしてそのニップルには、キャップで蓋がされています。

03-s_2025-06-02DSC02291

このニップルは何のためについているんでしょう?

蓋をするぐらいだったら、なくてもいいんじゃないの??

pose_english_why_man

詳しく調べました。('▽'*)ニパッ♪

【インシュレーターのニップルは何のため?】

- インシュレーターのニップルの主な用途-
1. 負圧測定ポート・・整備時にマノメーター(負圧計)を接続し、キャブレターの同調(マルチシリンダー車)や、吸気負圧の確認を行うための診断用ポートとして使われる。
(単気筒でも整備中の燃調や吸気状態の確認に用いることもあり。)

2. AIS接続ポート・・AIS装着モデルでは、ここにホースを接続してエアカットバルブに負圧を供給。

3. 外部装置の制御用(例:バキュームペットコック)・・一部車種では、負圧式フューエルコックや、二次エア制御バルブの作動源として使用されることがある。

4. 排気ガス試験時の制御信号源・・車検や型式認証試験などで、正確な吸気圧変化のデータ取得が必要な場面に使用される場合もある。


- なぜ「最初から無くてもいい」わけではないのか? -
インシュレーターのニップルは、バイクにとって整備性・拡張性を持つユーティリティ端子のような存在。

設計段階で複数の用途に転用可能な構造にしておくことで、同一エンジンを使う複数モデル間での部品共用性を高められる。

使われない場合は単にゴムキャップで塞ぐだけなので、製造コストもほとんど増えない。


それでは・・

【このニップルに蓋がなかったり、AISへのホースが裂けていたら、(開放されていたら)どうなるの??】

前述の<エアカットバルブに負圧が発生するメカニズム>を理解できたら、おのずと回答が導き出されますよね。(^_-)-☆

① 吸気漏れによる混合気の希薄化・・本来密閉されているべき吸気経路に外気が入ることで、混合気が極端に薄くなり、失火やアイドリング不安定を招く
(2次エアの吸入)。 → アイドリングが上がったり不整になる。

圧縮失火や失火燃焼が起こると、吸気側へ火が戻ることがあり、ニップルが開放されていると逆流経路になる。 → バックファイア(吸気側への炎の逆流)を誘引。

空気の通り道ができて排気系に未燃焼ガスが送られやすくなる・・シリンダー内で不完全燃焼が起こると、その未燃焼ガスが排気に回り、排気温が高いときに発火する可能性がある。 → アフターファイア(マフラー側の爆発)が起きやすくなる。

④本来の負圧バランスが崩れるため、負圧制御バルブやAIS等の作動にも影響を及ぼすことがある(装備していれば)。 → 負圧関連装置の不調や誤作動の原因にもなる。  
AISにおいては、AISへのホースが裂けていたら、AIS内に吸気の負圧が発しないのでエアカットバルブが閉まらず、排気脈動で排気ポートの負圧があるすべての時において排気ポートへエアが間欠的に流入する。

*インシュレーターのニップルを開放したままにしておくと、吸気漏れによる不調だけでなく、排気系での異常燃焼(アフターファイア)、逆火(バックファイア)他諸々のリスクが確実に高くなります。

よって、インシュレータニップルを未使用の場合は、必ず耐熱性のある専用ゴムキャップでしっかりと密閉することが重要です。



文中、何度か出てきましたが、エアカットバルブへの負圧は、多くはセローのようにインシュレーターニップルから取り出していますが、例外もあるようです。

今回はこのあたりで・・。

-続く-


*キャブレター車におけるエアインダクションシステム(AIS)の説明です。

エアインダクションシステム(AIS)について VOL1 「仕組み・メカニズム」

前回記事の続きです。

前回記事でも触れましたが、AIS:エアインダクションシステムとは、「未燃焼ガスに対し再度排気ポートにエアを流し、燃焼させて有害物質を抑制するシステム」程度しか知らなかった私。(^^;

巷では、「AISをキャンセルするとエンジンレスポンスが上がる」とか、「アフターファイアが起こるのはAISが原因」とか書かれている情報がごまんとありました。

はたして本当なのでしょうか?
question_head_gakuzen_boy2

それではセローのAIS:エアインダクションシステムの仕組み/メカニズムについて、お勉強したことを、自分がさらに理解を深めるために説明します。


なにせネット上には、エアインダクションシステム内を構成する重要な二つのバルブ、すなわちエアカットバルブとニードルバルブの両方の動きが説明がされているものが見つけられなかったので、かなり手こずりました。(^^;

(AISをエアカットバルブの制御だけで片付けられているWEBサイトもひとつやふたつだけでなかったりして・・ σ(^_^;)アセアセ )


*AISのメカニズムは、AIS内のエアカットバルブとニードルバルブがどのような状況でどうなるのかわからないと、理解することは不可能だと思います。 ハイ!



AI(エアインダクション)システムのメカニズム

1.エアカットバルブとリードバルブの状態


1)通常時のエアカットバルブとリードバルブの状態

2025-06-16AIシステムメカニズム通常時図01

【エアカットバルブ】・・・開いている

【リードバルブ】・・・閉じているか、ごくわずかに開いている状態

-説明-
エンジンがアイドリングなど負荷が小さい時、排気圧力が比較的一定で、排気ポートの負圧も弱いため、リードバルブを開くほどの強い負圧は発生しない。

よって、リードバルブは閉じているか、ほとんど動作していない。⇒空気はあまり流れ込まない状態。


2)減速時のエアカットバルブとリードバルブの状態

2025-06-16AIシステムメカニズムⅡ減速時図01
【エアカットバルブ】・・・閉じている

 減速時にはエンジンブレーキがかかり、負圧が高まるため、アフターファイアを防ぐ目的でエアカットバルブは閉じられ、外気が入らないようになる。

【リードバルブ】・・閉じたまま、もしくは開いても空気が通らない

排気ポート側に強い負圧(サージ)が発生するため、リードバルブは開こうとする。 しかし、エアカットバルブが閉じているため、空気の流れ自体が断たれており、リードバルブも実際には開くことができない(または開いても空気は流れない)状況になる。
↓↓↓
理論上:リードバルブは開こうとする
実際:エアの流れが遮断されているため、実質的には閉じたまま、もしくは開いても空気が通らない

補足情報:
エアインダクションシステムのリードバルブは、逆流を防止するチェックバルブとしての役割があるため、排気ガスの圧力で空気が逆流しないように常時閉じる方向にバネ圧がかかっている。

AISは、排気側に負圧がかかり、かつエアカットバルブが開いているときだけ、リードバルブが開いて空気が吸い込まれる仕組みです。

*減速時においても、パーシャル状態が発生した際はエアカットバルブが開くタイミングがあります。その際は、リードバルブも断続的に開閉し、間欠的に排気ポートにエアが吸入されることがあります。詳しくは本記事の末尾参照。


3)加速時のエアカットバルブとリードバルブの状態

2025-06-16AIシステムメカニズムⅢ加速時図01

【 エアカットバルブ】・・・開いている
加速時はスロットルが開いており、エンジンが多くの空気と燃料を吸い込んで出力を上げている状態。

このとき、エアカットバルブには十分な負圧がかからないため、バルブは開いた状態になっている。

よって、大気中の空気がエアインダクションシステムを通じて排気ポート側に供給される可能性がある状態になっている。

【リードバルブ】・・・開く可能性が高い
加速時、燃焼ガスの流れが強くなり、排気系には一時的に負圧が発生するタイミングがある。

特に、排気バルブが閉じる直前や排気流の速度変化により、エアインダクションポート側に吸引力が働くタイミングがある。

このタイミングで、リードバルブが開き、空気が排気ポートに導入される可能性がある。

<注意点>
高負荷時は排気ポートの圧力が高いため、リードバルブが開くタイミングは限定的(ずっと開いているわけではない)。

リードバルブは排気の脈動に応じて断続的に開閉する。


上記のとおり、状況に応じてエアカットバルブとリードバルブの開/閉がおこなわれます。


上記内容を理解するには、以下のエアカットバルブとリードバルブの開/閉のメカニズムを理解する必要があります。
(説明の順番が前後 逆になったかもしれません。ごめんなさい。)


2.エアカットバルブに負圧が発生し、エアカットバルブが閉まるメカニズム
1)エアカットバルブの構造と役割
エアカットバルブ(エアカットバルブアセンブリ)は、インシュレーター(インテークマニホールド)の負圧を利用して動作するダイヤフラム式の制御バルブです。 

主に減速時のアフターファイア防止が目的。

2) 負圧発生のメカニズム
 減速時(スロットル閉じ)、ライダーがスロットルを急に戻す(閉じる)と、スロットルバルブが閉じてエアの流入が絞られる。 

しかしピストンの動作は続いており、シリンダー内では吸引動作が起こる。

よって、インシュレーター(インテークマニホールド)内に強い負圧が発生する。

この負圧が、負圧ホースを通じてエアカットバルブのダイヤフラムを引っ張る。

ダイヤフラムが引かれると、エアバルブが閉じて空気の流入を遮断する。

この結果、排気側への空気供給が止まり、アフターファイアを防止する。


3.リードバルブの負圧の発生メカニズム
1)リードバルブの役割
リードバルブは逆流防止弁の役割。

排気ポート側に取り付けられており、排気系に負圧があるときだけ外気を吸い込むようにできている(AIS経由)。

2) リードバルブに負圧がかかる状況
- 排気脈動による負圧の発生-
エンジンが動作すると、排気バルブの開閉とピストンの動作によって、排気管内部には排気脈動(波状の圧力変動)が生まれます。

特に排気バルブが閉じた後、排気ポート内で一時的に負圧になる瞬間がある(排気ガスが高速で通過した後の流体力学的な吸引効果)。

この瞬間に、排気ポート側に負圧が発生し、リードバルブが開く。

外気がAIS経由で排気ポートに引き込まれる。

 ※この負圧は「吸気側の負圧」とは性質が異なり、排気脈動による瞬間的な吸引力です。


4.AIS機能が働くタイミング

エアインダクションシステム。未燃焼ガスに対し再度排気ポートへエアを流入させ、燃焼させて有害物質を抑制するシステム。

*注:ここでは燃焼という言葉を使っていますが、この「燃焼」という言葉が多くの人に誤解を与えています。以後の記事でこの事について触れます。)


前述の内容を理解すれば、この機能=AIS:エアインダクションシステムが働くタイミングの回答は・・

エアインダクションシステム(AIS)が機能するタイミングは、「エアカットバルブ」と「リードバルブ」の両方が開いているときに限られます。

このため、よく言われる「減速時にAISが働く」という表現は、アフターファイヤーが減速時に多く発生するという現象に起因した誤解であり、AISの構造・メカニズム的には正確ではありません。

AISの基本構造では、以下の2つの条件が揃ったときにのみ、排気ポートへ外気(新鮮な空気)が流入します。

・エアカットバルブに負圧がかかっていない(=エアカットバルブが開いている)
かつ
・排気ポート側に排気脈動による負圧が発生している(=リードバルブが開く)


一方、減速時はスロットルバルブが閉じ、インシュレーター(インテークマニホールド)内に強い負圧が発生します。この負圧によってエアカットバルブが閉じるため、たとえ排気ポートに負圧があっても空気の流入経路は遮断され、リードバルブの先に空気が供給されません。 (←*この部分の理解がされておらず間違った情報が散見されます。)

実際のライディングでは、「常に加速」「常に減速」といった単純な状態は少なく、加減速やパーシャルスロットルを繰り返す状態が多く見られます。
そのため、パーシャル(軽くスロットルが開いている)状態などにおいて、エアカットバルブとリードバルブが同時に開くタイミングが断続的に発生し、排気ポートへの空気流入も瞬間的・間欠的に行われるのが実情です。

これが、エアインダクションシステムの基本的な動作メカニズムです。


それでは、この内容の理解を深めるために、おさらいの意味も含めて、深堀していこうと思います。

-続くー


*キャブレター車におけるエアインダクションシステム(AIS)の説明です。




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