エアインダクションシステム(AIS)に関するメカニズム的なお話もいよいよこれで最終です。

VOL1~5では、エアンンダクションシステムのメカニズムのお話。

VOL6~7では、アフターファイアのメカニズムとか燃調の関係について書いてきました。


今回は、AISとアフターファイアの関係性について掘り下げてみようと思います。

巷にでている情報は、おおまかに↓のとおり。

「AISによって外気が排気ポートに送り込まれることで、未燃焼ガスが再燃焼し、アフターファイヤーが発生します。これ(AIS)を止めると再燃焼が起こらず、アフターファイアが発生しません。」

本当でしょうか??

ここで大事なのが、AISの目的・役割です。

1. AISの目的・役割
AISは、未燃焼ガスに空気(酸素)を送り込むことで、排気ポートやエキパイ内で酸化反応(再燃焼や自然発火)を促進し、HC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)などの有害物質を削減するための排ガス対策装置です。

具体的には・・
①HC(炭化水素) + O₂(酸素)⇒ CO₂ + H₂O
炭化水素と酸素が結合し化学反応で二酸化炭素と水に変わる。

②CO(一酸化炭素) + O₂ (酸素)⇒ CO₂ 
一酸化炭素と酸素が結合し、二酸化炭素に変わる。

ここでよく「AISは、未燃焼ガスを無害化する」と説明されていたりしますが、炭化水素や一酸化炭素を二酸化炭素にかえているわけで・・・

地球温暖化の要因とも言われている二酸化炭素。毒性の強い炭化水素や一酸化炭素よりかはマシといったところなんでしょうね。(^^;

補足でこの3種のガスの人体・環境への影響比較に関して作表してみました。


2025-07-05三種ノガスの人体環境への影響比較01

*エアインダクションシステム(AIS)では、「未燃焼ガスに含まれる毒性が強く、反応性の高い物質(HC、CO)を、比較的安定で無害なCO₂に変える」のが目的です。


ここで混同されがちなのが「酸化」と「燃焼」です。

2.排気ポート内で起こる「酸化」と「燃焼」の違い

2025-07-05排気ポート内で起こる「酸化」と「燃焼」の違い 01

なぜ「再燃焼(アフターファイヤー)」と表現されがちなのか?

AISが外気を送り込むことで排気系の酸素濃度が上がるのは確かです。

それにより、排気温度が非常に高い条件下で、マフラー内部やエキパイに残った可燃ガスに自然発火的な再燃焼が起こることがあります。

この「爆発音」がアフターファイアであり、これを一般的に「AISによって再燃焼が起きる」と表現しているようです。

しかしこれは、AISの本来の目的である「酸化による排ガス浄化」とは違う現象です。
言い換えると、AISは燃焼を目的にしていないが、その副作用として“燃焼が起きてしまう”ことがある、というのが正確な理解だと思います。

多くの解説が「再燃焼=AISの主目的」のように説明しているために、AISがアフターファイアを引き起こすと誤解されているものと思われます。 実際は酸化促進が主目的で、再燃焼はあくまで副次的な現象であり、AISキャンセルでアフターファイアが減少したとすれば、それは副作用を抑えた結果に過ぎない、ということになります。


ここでもう一度アフターファイア発生の主な条件をおさらいしたいと思います。(VOL7で説明済み)

3.アフターファイヤー発生の主条件
①未燃焼ガス(可燃物-HC)の濃度

②酸素(空気)が排気内に入り込むこと(AISやマフラーの構造等)

③排気系が十分に高温であること(自己着火できる温度)

④燃焼反応の急激さ・局所性(=点火・爆発)

この複数の条件がすべて揃ったときのみアフターファイアが生じます。

⇒したがって・・

「AISがアフターファイアを誘発する」という表現は、やはり誤解を招いているように思います。

AIS(エアインダクションシステム)装着車両は、排ガス規制への対応として燃焼効率を高めるため、規制前の車両よりもややリーン(薄め)の燃調が施されています。

このため、通常のセッティング状態においては、排気中に含まれる未燃焼ガスにAIS経由の外気(酸素)が混入しても、再燃焼に必要な条件を満たしにくくなるため、アフターファイヤーは発生しにくくなっています。

特にアフターファイアの発生しやすい減速時には、エアカットバルブが閉じ、リードバルブから排気ポートへエアが流入しないようになっています。

アフターファイアの発生の多くは、AISと無関係のキャブレターセッティングの不良やエンジンコンディションの悪化、マフラー交換やエアクリ側の改造で吸気~燃焼~排気のバランスが崩れた結果が多いように思います。(電気系不良による失火等の場合もありますが、ここでは除外。)

ただ経年劣化でAISバルブの不良により、本来排気ポートへエアが流入されないタイミングでエアが流入し、アフターファイアを誘発する可能性も否定はできません。

そして、マフラー交換で排気菅内の高温化ならびに吸気~燃焼~排気のバランスが崩れてアフターファイアが発生している場合、燃調の調整はエアインダクションシステムをキャンセルした方がやりやすいのも事実です。


4.結論
「エアインダクションシステムは、直接的にアフターファイアを誘発する主原因ではないが、誘発する一因になっている場合がある。」ということだと思います。


長々とおつきあいありがとうございました。


最後に、ここまで理解できて、あらためてヤマハのサービスマニュアルをみなおしてみると・・

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「減速時や排気ポートに負圧があるとリードバルブが開き新鮮な空気が排気ポートに流れ込む。」

①「排気ポートに負圧があると」
排気脈動によってリードバルブが開くので正解ですが・・

②「減速時や・・・リードバルブが開き」
減速時は、吸気系に負圧が発生し、エアカットバルブが閉じているので、排気ポートにエアは流入しないようになっています。

メーカーのサービスマニュアルがこれなので、なかなか理解できないのが当然かもしれません・・。(^^;