<もくじ>
Ⅰ章 鉛バッテリーの構造
 1.バッテリーの構造概要
 2.極版について
   1)グリッド(格子)とは
   2)活物質(Active Material)とは
 3.セパレーターの構造と役割

Ⅱ章  鉛バッテリーが劣化する原因とそのメカニズム
 
1.サルフェーション(硫酸鉛PbSO₄の蓄積・結晶化・粗大化)
   1)サルフェーションの概要
   
2)サルフェーションの発生メカニズム
   
3)電圧が高いとサルフェーションが起きにくい理由

 2.グリッド(格子)の腐食・酸化(Ⅰ章と一部重複)
   1)
グリッド(格子)とは
   2)グリッド(格子)の主な役割
   3)材質と製造技術
   4)劣化との関係

 3.活物質の剥離・脱落(Ⅰ章と一部重複)
   1)活物質(Active Material)とは
   2)活物質(ペースト)の構成と役割
   3)ペーストの組成と製造
   4)活物質の反応メカニズム(放電時)
   5)活物質の劣化
   
 4.電解液の劣化・減少(電解質劣化)
        
1)電解液とは?
        
2)劣化・減少の主なメカニズム
        
3)対策のポイント

      4)硫酸濃度(比重)がバッテリーに与える影響


 5.セパレーター劣化とそのメカニズム
   1) セパレーター孔(ポア)の詰まり(Pore Blocking)
   2)セパレーターの酸化劣化(主に正極側)
   3) セパレーターの熱劣化・熱収縮
   4)活物質の脱落によるショートリスク増大(底部堆積物)
   5)セパレーターの極板密着性の変化(乾燥化)
   6)経年劣化での微小クラック・ピンホール
   7) どの極板を袋状セパレーターで包むかは“メーカーの設計思想で異なる”
   8)まとめ:セパレーターの劣化はバッテリー寿命の“最後の砦”

 6.温度・熱サイクルによる加速劣化
   1)化学反応速度の加速 
   2)電解液の蒸散・乾燥
   3)熱膨張・収縮による機械的ストレス
   4)過充電が起きやすくなる
   5)熱暴走(thermal runaway)のリスク増加
 
 7.劣化原因から導かれる対策

Ⅲ章 国産GSユアサ、台湾ユアサ、安価な中華バッテリーの違い


Ⅳ章 バッテリー充電器の違い

Ⅴ章 その他


・・徐々に書き上げていく予定なので、”もくじ”の内容は後日修正が入る可能性があります。




前回記事「Ⅰ章 鉛バッテリーの構造」の続きです。


Ⅱ章  鉛バッテリーが劣化する原因とそのメカニズム 

 鉛バッテリーは”可逆反応(充電⇄放電)”を繰り返すことでエネルギーを蓄えますが、徐々に不可逆的な変化が蓄積し、容量が低下していきます。


1.サルフェーション(硫酸鉛PbSO₄の蓄積・結晶化・粗大化)

1)サルフェーションの概要
 サルフェーション(硫酸鉛の結晶化)は、
・放電状態が長く続く
・バッテリーが低電圧のまま放置される
・充電が不十分な状態が繰り返される
ことで、極板上に粗大で硬い硫酸鉛(PbSO₄)の結晶が形成される現象です。 

時間経過とともに硫酸鉛(PbSO₄)は蓄積
結晶化粗大化し、活物質の導電性を阻害(=電極反応が妨げられる)。電極反応が妨げられ、充電しても容量が戻らない状態になります。
またサルフェーションの進行度はセルごとに異なり、電圧バランスも崩れることになります。
⇒結果:内部抵抗上昇、始動電流低下


開放電圧と残容量(SOC)とサルフェーションの関係を図式化してみました。
2025-11-07開放電圧と残容量とサルフェーションの関係図01
開放電圧が12.3~4V以下になるとサルフェーションが発生しやすくなります。

鉛バッテリーの開放電圧が12.3Vを下回る状態(すなわち、セルあたり約2.05V未満)では、内部でサルフェーション(硫酸鉛の結晶化)が発生・進行しやすくなります。


2)サルフェーションの発生メカニズム

以下に、開放電圧とサルフェーション発生メカニズムを化学的に説明します。

(1) 鉛バッテリーの基本反応
鉛バッテリーは、正極・負極で次のような化学反応をします。

放電時(エネルギーを取り出すとき)
PbO2​+Pb+2H2​SO4​→2PbSO4​+2H2​O

(補足)

PbO₂:二酸化鉛・・鉛と酸素の化合物。酸化鉛(IV)(さんかなまりイオン)とも呼ばれます。鉛蓄電池の正極活物質などに使われる、暗褐色の固体です。 
Pb:鉛
2H2​SO4​=H2​SO4​:硫酸×2
2PbSO4=PbSO₄:硫酸鉛(II)×2
2H₂O=:H₂O:水×2

⇒ 正極・負極の両方が「PbSO₄(硫酸鉛)」になります。
このPbSO₄は、充電で再び分解され、硫酸(H₂SO₄)が電解液中に戻ります。

(2) サルフェーションが起きる仕組み
サルフェーションとは、このPbSO₄(硫酸鉛)が再充電で戻らなくなる現象です。

 低電圧状態(=放電状態)を放置すると・・・
・電解液中の硫酸濃度が下がる
・PbSO₄が粗く・結晶化していく(→「硬いサルフェーション」)
・この結晶は電解液に溶けにくくなり、再充電しても分解しづらい

つまり、12.3V以下で長時間放置すると、PbSO₄が安定な結晶として定着してしまいます。


3)電圧が高いとサルフェーションが起きにくい理由

バッテリー電圧が高い(=充電状態に近い)ときは・・・
・電解液中の硫酸濃度が高い→ PbSO₄が溶けやすい
・電極反応が活発で、PbSO₄(硫酸鉛)がすぐ分解・再生される
・PbSO₄(硫酸鉛)が形成されても微細で可逆的(柔らかい結晶)

したがって、高い電圧を保つ(=高いSOCを維持する)ほど、硫酸鉛が安定に戻りやすく、硬化しにくいくなります。  


2025-11-07電圧とサルフェーション


-続く-

ps:本記事は自分の知識向上のために調べて作成したものです。 間違い等もあるかもしれません。ご承知おきください。