前回記事「Ⅱ-6.温度・熱サイクルによる加速劣化」の続きです。
<もくじ>
Ⅰ章 鉛バッテリーの構造
1.バッテリーの構造概要
2.極版について
1)グリッド(格子)とは
2)活物質(Active Material)とは
3.セパレーターの構造と役割
Ⅱ章 鉛バッテリーが劣化する原因とそのメカニズム
1.サルフェーション(硫酸鉛PbSO₄の蓄積・結晶化・粗大化)
1.バッテリーの構造概要
2.極版について
1)グリッド(格子)とは
2)活物質(Active Material)とは
3.セパレーターの構造と役割
Ⅱ章 鉛バッテリーが劣化する原因とそのメカニズム
1.サルフェーション(硫酸鉛PbSO₄の蓄積・結晶化・粗大化)
1)サルフェーションの概要
2)サルフェーションの発生メカニズム
3)電圧が高いとサルフェーションが起きにくい理由
2)サルフェーションの発生メカニズム
3)電圧が高いとサルフェーションが起きにくい理由
2.グリッド(格子)の腐食・酸化(Ⅰ章と一部重複)
1)グリッド(格子)とは
2)グリッド(格子)の主な役割
3)材質と製造技術
4)劣化との関係
3.活物質の剥離・脱落(Ⅰ章と一部重複)
1)活物質(Active Material)とは
2)活物質(ペースト)の構成と役割
3)ペーストの組成と製造
4)活物質の反応メカニズム(放電時)
5)活物質の劣化
4.電解液の劣化・減少(電解質劣化)
1)電解液とは?
2)劣化・減少の主なメカニズム
3)対策のポイント
4)硫酸濃度(比重)がバッテリーに与える影響
5.セパレーター劣化とそのメカニズム
1) セパレーター孔(ポア)の詰まり(Pore Blocking)
2)セパレーターの酸化劣化(主に正極側)
3) セパレーターの熱劣化・熱収縮
4)活物質の脱落によるショートリスク増大(底部堆積物)
5)セパレーターの極板密着性の変化(乾燥化)
6)経年劣化での微小クラック・ピンホール
7) どの極板を袋状セパレーターで包むかは“メーカーの設計思想で異なる”
8)まとめ:セパレーターの劣化はバッテリー寿命の“最後の砦”
6.温度・熱サイクルによる加速劣化
7.劣化原因から導かれる対策
1)化学反応速度の加速
2)電解液の蒸散・乾燥
3)熱膨張・収縮による機械的ストレス
4)過充電が起きやすくなる
5)熱暴走(thermal runaway)のリスク増加
7.劣化原因から導かれる対策
Ⅲ章 国産GSユアサ、台湾ユアサ、安価な中華バッテリーの違い
Ⅳ章 バッテリー充電器の違い
Ⅴ章 その他
・・徐々に書き上げていく予定なので、”もくじ”の内容は後日修正が入る可能性があります。
Ⅱ-7.劣化原因から導かれる対策
Ⅱ章では、「鉛バッテリーが劣化する原因とそのメカニズム」について解説しました。
劣化の仕組みを理解することは、バッテリーをより長く使い続けるための実践的な対策を取ることにつながるだけでなく、バッテリー選びの判断基準を明確にするという重要な意味を持つものと考えます。
ここではⅡ章を踏まえ、劣化原因から逆算した実際的な対策 をまとめます。
1)サルフェーション(硫酸鉛の結晶化・硬化)を抑える
<対策>
(1)低電圧状態での放置を避ける(深放電をさせない)
・開放電圧12.4V以下の状態を避ける。
・理想は 12.6V以上 を維持すること。
(2)過充電を避ける
・バッテリーの種類(MF/VRLA/開放型)に適合した充電器を使用する。
・安価な過充電しやすい充電器は避ける。
(3) サルフェーションに強い高品質バッテリーを選ぶ
・高純度鉛・適切なペースト添加剤・均質なグリッドを使用した製品ほど、サルフェーションに対する耐性が強い。
(4)初期のサルフェーション段階で進行を止める
・開放電圧12.6V以上を維持して、硫酸鉛が硬化する前に戻せる状態に保つ。
・電解液濃度の維持(過充電を避ける、開放型は適切に補水)。
※硫酸濃度が高すぎても低すぎてもサルフェーションリスクは増える。
2)グリッド(格子)の腐食・酸化を抑える
<対策>
(1) 過充電を避け、酸素発生量を抑える
・過充電はグリッド腐食を加速する最大要因のひとつ。
(2) 高温環境を避ける
・高温は腐食速度と自己放電を劇的に加速する。
・現実には完全回避は難しいが、「夏季の直射日光下での極端な放置」を避けるだけでも効果あり。
(3) 低品質バッテリーを避ける
・低純度鉛合金は腐食が早く、グリッドが痩せやすい。
・高品質なグリッド(高純度Ca合金など)を採用したバッテリー を選ぶことが有効。
3)活物質(ペースト)の劣化を抑える
<対策>
(1) サルフェーションの抑制(前項と同じ)
・硫酸鉛の結晶化は活物質の硬化・脆化に直結する。
(2) 乾燥・剥離を防ぐため、電解液の減少を防止
・過充電は電解液減少→活物質乾燥→剥離につながる。
・急速充電・急速放電を繰り返す使い方もペーストを傷める。
(3)振動を軽減する
・バイクの場合は困難・・・。
・高性能な足回りパーツ??(^^; 現実性?
・高性能な足回りパーツ??(^^; 現実性?
(4) 活物質品質(ペースト品質)の良いバッテリーを使用する
・粒度の均一性
・粒度の均一性
・適切な膨張材・導電材の配合
・ペースト密着性
・ペースト密着性
これらは寿命に大きく影響するため、品質差が出やすい。
4)適正な硫酸濃度(比重)を保つ
<対策>
(1)過充電による電解液減少を避ける(VRLAでも同様)
・電解液減少は硫酸濃度変化 → サルフェーション・グリッド腐食・活物質乾燥の全てを悪化させる。
(2) 開放型バッテリーは適切に補水する
・補水不足は比重上昇 → 腐食促進
・補水しすぎは比重低下 → 始動性悪化
(3)適正比重かつ耐久性の高いバッテリーを選ぶ
・始動性に優れる比重(1.27〜1.28)
・グリッド合金の耐腐食性
・ペースト保持力
これらを備えた高品質バッテリーは寿命が長い。
<総括>
最後に、鉛バッテリーの劣化要因は相互に関連しているため、一つの対策ではなく複数の対策を組み合わせて管理することが重要だと考えます。
特に「電圧管理」「過充電防止」「品質の良いバッテリー選び」の3つは、ユーザー側で最も効果が高い対策です。
-続く-
ps:本記事は自分の知識向上のために調べて作成したものです。 間違い等もあるかもしれません。ご承知おきください。
-続く-
ps:本記事は自分の知識向上のために調べて作成したものです。 間違い等もあるかもしれません。ご承知おきください。

















